Friday, January 7, 2011

映画鑑賞:キャタピラー (パリにて)

ベルリン映画祭で寺島しのぶが銀熊賞を獲った話題の反戦映画をパリで観て来ました。

日中戦争から第二次世界大戦へと戦争が拡大する中、田舎で戦火から四股を失う重症を追いながらも帰還した夫は、近所では「軍神様」として敬われる。
活躍をたたえた勲章と自分が掲載される新聞を眺めて日々を過ごすことで、自分の存在を確かめるしかない、口の利けない夫と、生活の全てをまかなう妻。二人のそれぞれの思いと、戦争とを合わせた物語です。

サンジェルマンのアート系映画館
勇敢に、国のために戦場で戦ったはずの夫ですが、戦中、中国人の女たちをレイプしては殺すという事をしてきたのです。そんな事をしたために四股を失い、軍神様と敬われるのは彼にとっては「生き地獄」だったのではないでしょうか。そして過去の夫婦間の問題などと併せながら、義務的ながらも神様のお世話をする献身的な妻を演じる妻。見せしめのように彼をリアカーに乗せ村を歩く所に女のしたたかさを感じました。
話題になっていたセックスシーンですが、淡々としています。そのシーン自体が愛を確かめ合うというより、欲望を満たすだけの単なる行為でしかないからです。ただそういうシーンをこの女優さんは体当たりで演じていました。

後半、原爆が広島、長崎に落ち敗戦になった・・・世界では何人死んだなどと繋げ、戦争はおろかだー、というすごい直接的な挿入歌が入る所に、「これでもかー感」があってそこまでしなくても分かるよとは思いました。
戦争に関する事実を描く久しぶりの反戦映画なので観る価値はありますが、もっともっと私たちが知るべき過去が描かれた映画が出てきて欲しいと思いました。

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